タシタゲ

2017年09月22日

ドラゴンが描きあがるまで

 こんにちは。クズザンポラー。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。

私の職場には、お気に入りの壁画があります。

これは5年ほど前、ある時ふと「壁が寂しいな」と思い『ここにブータンの壁画、できればシンプルなカラーで描いてもらったらどうかな』と提案したところ、あっさりとOKが出たという経緯がありました。もし日本の職場だったら、こんなに簡単に許可はされないと思うのですが、ここはブータン。いいアイデアだと思ったら、すぐに受け入れてくれました

絵柄も全て絵師にお任せで、選ばれた壁画のデザインは、

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ドラゴンでした。

ブータンは雷龍の国とも称され、ドラゴンは様々な所でモチーフとして描かれています。茶色の壁に白地のドラゴン、なんかかっこいいですよね。

しかも、これを書いてくれたのは趣味で絵を描いているといるチョニーさん。別に絵を描くことを職業にしているわけではないのですが、本当に上手なのです。ちょうど、どうやって描いていくのかな~と興味があったので、以前に撮影した写真を探し出してきました。

まずは、描きだす前にじ~っと壁を眺めていたのですが、その後、はしごに上って書き始めました。

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え~~ 鉛筆などで下絵を描かないの???  彼は下絵なしで直接描き始めました。

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ああ、もうこれは動画を撮っておけば良かったな、と思うくらいすいすいと。龍が踊るように描かれていくのですよ。やはり眼球は最後に筆を入れていて、その瞬間に壁画に生命が宿ったように感じました。

そして完成したのが、冒頭にもご紹介したこちら。

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多分、1時間もかからずに描き上げていたと思います。すてき~。雲と龍、いいですね。

彼もやはり、ブータンの美術学校・ゾーリンチュスムで絵を勉強したそうです(詳しくはこちらの過去記事 )。ゾーリンチュスム(Zoring Chuum)では13の伝統芸術と工芸が重視されていて、ここでは10~20代の若い学生達が約4~5年かけて学んでいます。ブータンの13の伝統芸術とは、大工(伝統建築)、石工、彫刻、絵画、鋳物、機織り、竹細工、刺繍、木工、紙漉き、鍛冶、金および銀の加工があります。

そして、ブータンでの絵の勉強の基本は仏教のモチーフの模写から。

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(ゾーリンチュスムにて)

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(ゾーリンチュスムの授業風景)
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(ゾーリンチュスムにて、卒業制作?)


チョニーさんのあまりの絵のうまさに、川で石を拾い、八吉祥(タシタゲ)を描いてもらったこともあります。

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まるで売り物みたい。すいすいと描いてくれます。

絵が上手いっていいな~センスがあるっていいな~。

ブータンには寺院以外などでも、壁画を見る機会は多いのでもし目にする機会があったら、学校で模写をたくさんしたんだろうな、とその姿を思い浮かべてみて下さい。幸せを感じさせる壁画がたくさんあります。



:絵心がほしいな。。。

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2013年11月21日

ブータンの砂絵(米絵?)

 こんにちは。クズザンポラ―。

 昨日まで、パロ谷のお米の収穫の模様をお伝えしてきましたが、今日はお米で吉祥模様を描く「ドゥンナ」の習慣をご紹介します。

このドゥンナのイメージは、「砂曼荼羅」またはインドの砂絵の「コーラム」と似ています。

チベット本土やインド・ラダックのチベット仏教寺院では、仏教世界を表す曼荼羅(マンダラ)を砂で描く「砂曼荼羅」を見る機会があります。ブータンでも見たことはありますが、割合としては少なく、珍しいものです。砂曼荼羅は完成後に一定の規則によって破壊(破檀)し、川に流すまでが儀式の一部なので、なかなか目にする機会がないからかもしれません。また、以前、砂曼荼羅はカギュ派のお寺で行われることが多いと聞いたことがあるような・・・・ブータンはカギュ派とニンマ派が大部分を占めているので、そのことも関係しているのかもしれません。

今回は、お祝いのための砂絵をお坊さんが描くと言うので見学をさせてもらいました。

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まずは、赤いじゅうたんを敷きます。

参考までに、どんなものが完成していくのかという例として、ブータンの王様とお妃様のロイヤルウェディングの会場でみたものです。↓↓↓↓ 

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遠くから見ると、砂に見えますが、ブータンではお米を使って描くところが興味深いです。

さて、どうやって描いていくのか、お坊さんの手元に注目。

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既に着色したお米を使って、軽く手のひらに握り、そして描いていきます。

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下絵は全く無しで、直接描きます。道具も全く無しです。砂曼荼羅は精緻なものですし、仏教世界を視覚的に体現するため規則通りに描かなければいけないため、筒のようなものにいれて少しづつ叩きながら描きます。

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今描いているのは、花です。花もよくモチーフとして選ばれますが、その他に、八吉祥(タシタゲ)なども描かれます。

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通常、5色以上を使うそうですが、お米に色を付けたものを使います。お米は、赤米ではなく白米に色付けをしたもの。

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今回は8色を使いました。

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完成したのが、こちら。花の部分や葉の部分は、何色かで縁取りをして立体感を出します。

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今度は円を描きます。鉛筆と糸を使ってコンパスのようにして、イメージラインを作り、その上からお米を使って描いていきます。慎重な作業がひと段落してから、お坊さんにいつどこで習ったの?などと聞いてみました。このお坊さんは、フォブジカ谷にあるガンテ・ゴンパで3年間の瞑想の修行をしてから、このドゥンナを習ったとのこと。

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そして、描いた文様は、祝福されるべき人によって歩いて壊されると、幸運がやってくると言われています。このあたりは、インドのコーラムとそっくり。インドのコーラムは、女性によって描かれ、日常的なものとしては毎朝、各家庭の玄関先などに米粉を使って幾何学模様を描く習慣があります。母親から娘に伝えられるため、花嫁修業としても大切な習慣の一つ。このお米は、自然にいる鳥たちへの捧げものにもなります。

コーラムは米粉などの粉状のものを使用しますが、ブータンではお米そのものを使うため、細かい模様は描きませんが立体感がある模様に仕上がります。ブータンで、このドゥンナを見る機会があったら、きっとそれは何かの祝福の印。出会う機会があったら、お祝いを祈って見て下さいね。

砂曼荼羅とも、コーラムとも似ているようで違う、ブータンのドゥンナの習慣、もう少し関係性を調べてみたいな、と思いました。

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:きれいだね~おいしいかなぁ~
:絶対にくしゃみしたり、この上を歩いたりしないでね~~




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2011年04月26日

マニ石とタシタゲ

 こんにちは。クズザンポラ―。今日は、私の好きなもののひとつ、マニ石をご紹介します。

 ブータンだけではなく、チベット圏内でよく見かけるマニ石。石に経文やお釈迦様の眼、仏画やタシタゲ(八吉祥)を描いたものの総称です。いろんな形式があります。以前ご紹介した、壁のようなチョルテンの下に経文を彫りこんだ板のようなマニ石もあるし、スレートに描いたものもあるし、ただ、石を積み上げただけのものもあります。

 今まで一番感動したマニ石は、インドのザンスカールに行く途中に無造作に重ねられ、村の入り口に道祖神のように守るように置かれたもの。ひとつひとつに手の込んだ彫刻が施されていて、すごく欲しい!と思いました。でも、これは「彫師が旅人のようにやってきて村の人に応えて彫っていくもの」と聞いて、欲しいと思ってはいけないと反省し、更に素敵だなぁと感心したのを覚えています。

 ブータンでは、手のひらサイズ、またはもっと小さいサイズのマニ石がかわいらしくて好きです。
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知り合いの絵師さんが、マニ石を持ってきてくれました。最近、窓を開けると春風が吹いて書類が飛ぶことがあるので、ペーパーウェイトとして机の上において、目でも楽しめていいなぁ、と思ったからです。
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「蓮の花」や「ほら貝」。
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「勝利の旗」と「宝瓶」。

今回は、タシタゲ全部のマニ石が揃いませんでしたが、せっかくのなのでブータンの方にタシタゲの八つの意味を聞いてみました。

1.「宝傘」は、尊厳の象徴。災いから守り、平安をもたらす。
2.「2匹の魚」は、現在の世俗の束縛から、解き放たれること。
3.「宝瓶」は中に不老不死の聖水があり、その瓶は精神を清める。
4.「蓮華」は、泥の沼から悟りの花を咲かせた菩薩の象徴。清らかさを表す。
5.「ほら貝」は、勝利へと導き、名声を高める。(右巻きなんですって)
6.「永遠の絆」は、終わりのない永遠の愛・友情、信仰と慈悲の教え。
7.「勝利の旗」は、その名の通り。戦いではなく、悟りに至った精神の高みの勝利を表す。
8.「法輪」は、お釈迦様の説いた法にそってすすむ車輪。菩提心を表す。

う~ん。全部欲しくなるところですね。
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これは何でしょうか? 
絵師さんには聞き忘れてしまったのですが、これはおそらく2本の象牙です。ブータンのお寺では象牙が良く飾られていて、象牙が貴重なものであること、それを捧げることは宝物を贈るのと同じ意味があります。今でも南ブータンでは象が棲息しているそうです。




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絵師さんも簡単にすらすら描いていくので、その才能が羨ましい限り。机の上に置いているだけで、ありがたい、そして落ち着いた気分にさせてくれます。お土産物屋さんでも売られていますが、ブータンは石などの持ち出しは禁止なのですが、いいのかな??

その他にもタシタゲのグッズは壁掛け、しおりなどたくさんあるので、お土産にもおすすめです。



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:僕だって招き猫として福を呼び込みますけど~?!





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2011年03月26日

ブータンのデコトラ

 こんにちは。クズザンポラ―。いかがお過ごしですか?

仕事中、あぁ、疲れたなぁ~と思って、窓の外をふと眺めてみました。
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・・・ん?これはプナカ・ゾンの絵??何だろうと思って近づいてみると、外に大型トラックが停まっていました。
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デコトラです。これはインドのTATA製。ブータンのトラックはほぼすべてインドから来ており、タタのものが圧倒的に多いです。ちなみにインドでは『タタ』と子供たちが良く言います。これは、昔、インドに車が走り始めた時TATAの車が多く、車が珍しかったので子供たちが手を振りながら「タ~タ~」と言っていたそうです。そのため、タタ=バイバイ と言った意味になりました。ベトナムで ホンダ=バイク を表すような、同じように造語となった言葉です。ブータンの子供たちにも通じます。

デコトラと言えば、パキスタンが派手派手で有名ですが、インドも結構カラフルなものが多いです。これも、インドのトラックだろうなぁ、と思っていました。

でも、窓からのぞいた時はゾンの絵が描かれていたし、、と思ってよくよく見てみると、、、これ、ブータン風アレンジのデコトラではありませんか。

18 (2)先程、窓からのぞいたのは、トラックの扉の上部分に書かれたデコレーション。やっぱり、プナカゾンでした。
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正面から見てみると、
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『PUBLIC CARRIER』と書かれた看板のど真ん中に描かれていのは、チベット仏教のカーラチャクラのシンボルマーク。カーラは時輪、チャクラは存在を表し、ダライラマが行う灌頂
の中で、これが最も重要視されるのは、私達の心、体を超え、宇宙までも包括し、世界平和への祈りが込められているからです。このデザインは、ナムチュワンデンというシンボルで、マントラ(真言)を一つの飾り文字にしたものです。

そして、、、このマークの左右には、
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ランプの形を利用して、仏教の教えの象徴・法輪のマークにアレンジしています。そして、その下にはラッキーシンボルの八吉祥・タシタゲがデザインされています。左側から、蓮の花、2匹の魚、ほら貝、右側は、永遠の契り、宝傘、法輪が描かれています。

運転席にも乗せて~と頼んだら、気軽に案内してくれました。
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車内には、高僧ケンチェリンポチェや国王の写真がたくさんありました。これで、八代亜紀さんのブロマイドがあれば完璧だなぁ、と思ってみたり。
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このトラックは、薪ストーブ(ブカリ)用の薪を運んできてくれたのでした。もうそろそろ、ブカリの季節も終わりかけています。日に日に暖かくなってきています。

このトラック、カッコいいなぁ、素敵だなぁ。
このピースフルなトラックに食糧を目一杯積んで、えがちゃんみたいに、なかなか物資が届かないと言う福島県の南相馬市やいわき市に届けたい、、、と思った一日でした。

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:トラックが来たくらいじゃ起きません。


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2010年12月20日

お菓子の家@ブータン

 こんにちは。クズザンポラ―。もうすぐクリスマスですね。先日、アートカフェをご紹介した際に、店内にはクリスマスの雰囲気がありましたが、その他の場所ではあまりクリスマスを感じることがありません。クリスマスソングが流れていないからかもしれません。

 しかし、ブータンでもクリスマスを感じるイベントが少しづつですがあります。同僚がジンジャーブレッドハウスを作ると言うので、毎日、パーツが出来上がる度に楽しみにしていました。

 でも、、、、「ジンジャーブレッドハウス」とは、いったい何なのか?皆さんはご存じでしょうか。恥ずかしながら私はまったく知りませんでした。アメリカでごく一般的にクリスマスに作られる、生姜をきかせたクッキーやブレッドを使いた、いわば『お菓子の家』のことです。日持ちがし、魔よけの意味を込めて生姜を使うそうです。

毎日、クッキーが焼きあがり、窓の形や、靴下、ジンジャーマンの形ができあがったら、組み立てです。のりづけが終わり、だんだん、家の形になってきました!外組みが終わったら、今度は細かい飾り付けの部分の作業です。屋根の上に、丸いクッキーを砂糖のペーストを使って貼り付けていきます。そこで、良い案を思いつきました。
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「細長いクッキーを使って、ログハウス風に仕上げるのはどう??」
『だめ。これはブータン風アレンジだから、この丸いクッキーは、民家の上にある板拭き屋根が飛ばないように置く石をイメージしているの』
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そ、そうだったのか。確かに、丸い形もかわいいですね。ブータンの家には薪ストーブもあるし(煙突の形は違うけど)、クリスマスムードは演出できるかも。丸石クッキーものせ終わり、家の中には松の枯葉を入れ、粉砂糖の雪を降らせたら、こんんなに可愛らしくできあがりました。

お菓子の家って、夢があっていいなぁ~と思い、帰宅しました。


そして、翌朝。

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何かが違う。なんか、昨日と違う。お気づきですか??

家の壁に、ブータンの八吉祥のシンボル・タシタゲから、ホラ貝、蓮の花、2匹の魚が描かれていました。ホラ貝は仏教の教えを四方八方に届け、精神力と権力の象徴。蓮の花は、泥から水上の悟りへと導く魂の成長、2匹の魚は幸せと子孫繁栄を表します。

ひとつひとつのシンボルに意味があり、私の頭の中は、クリスマスとおせち料理がセットになったようなイメージに

「でも、組み立てる前に絵を描いた方が、簡単でいいんじゃないの?」と思いますよね。でも、ブータンの民家の建て方が、この順序です。もちろん物質的にお菓子の家と実際の家を作るのは別です。ブータンでは家をシンプルに建ててから、毎年のお金の余裕があるかどうかを見ながら、壁画や木彫りの加え、家が毎年成長していきます。建てた時が一番立派で後は古くなっていく、というのではなく、長い年月をかけて家が変化していきます。

丸石屋根に加え、ブータン的壁画をデザインし、ブータンらしいお菓子の家が完成しました。そして、夕方。
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電飾が施され、最終的に完成しましたわ~素敵。ブータン的アレンジも加えられていて、かわいくって感激。早く食べたい、という気持ちを抑えつつ、クリスマスが来るのが楽し
みです。16
 
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        :絶対壊しません。飛びつきません。

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